私たちの六年目
崎田君の言葉に、大きく目を見開いた。


秀哉に会わない……?


もう五年間も、私の心の中は秀哉でいっぱいだったのに。


それを断ち切るなんて、そんなことが出来るの?


「とりあえず、一度やってみましょうよ。

秀哉さん断ち。

離れて少し冷静になれば、彼への見方が変わって。

そうしたら……」


そうしたら、いつか秀哉への思いが恋じゃなくなるのかな……?


頭ではわかってるんだ。


そろそろ好きでいるのをやめなくちゃって。


いい加減梨華を想うのをやめたら?って、秀哉にずっと言いたかったけど。


私こそが、やめないといけなかったのかもしれない。


秀哉に会いたくて、つい飲み会に参加していたけど。


もうそろそろ、この習慣を辞める時が来たのかもしれない。


「わかった。

しばらく飲み会に行くのはやめる」


私の言葉に、パーッと顔が明るくなる崎田君。


「そうしましょう。

僕、精一杯協力しますから。

菜穂さんの気が紛れるように」


もしかしたら私は、こんなふうに誰かにズバリと言われるのを待っていたのかもしれない。


少しずつ。


少しずつでいい。


秀哉を忘れられるように。


私なりに、努力してみよう……。
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