私たちの六年目
そんなある日の夜のことだった。


めずらしい人から着信があった。


戸惑いつつ、通話ボタンをタップすると。


『菜穂……?』


少し高めの澄んだ声が、私の耳に触れた。


「梨華……」


そう……。


電話の相手は、梨華だった。


「久しぶりだね」


『うん。ほんと、久しぶり……』


梨華とこうして話すのも、もう2ヶ月ぶりくらいになるのかな。


「元気にしてた?」


『うん、まぁ』


「例の人とは? まだ続いてるの……?」


私に連絡して来たってことは、もしかして……。


『うん、続いてる』


そう言われて、一瞬言葉に詰まってしまった。


そっか……。


まだ続いているんだ。


それなのに、どうして私に電話して来たんだろう。


「何か用事だった?」


『ううん、別に。久しぶりに、菜穂の声が聞きたくなっただけ』


「そうなんだ……」


『だって、菜穂って大学の頃からお姉ちゃんみたいで。

優しいし、頼りになるし、菜穂と一緒にいるとホッとしてたからさ。

だから、しばらく会ってないと、菜穂が恋しくなるのよ。

思い切って電話して良かった。

こうして菜穂の声を聞いてると、やっぱりなんだかホッとする』


「梨華……」
< 75 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop