恋の宝石ずっと輝かせて2
「あの、満月の夜の儀式ってニシナ様は一体何をされるんですか?」

 仁が訊いた。

「まあ、なんというか、満月の夜は一人で気ままに散歩に出かけられるんじゃ。一応山の平和に欠かせない儀式ということにしてるんじゃが、本当はニシナ様のただの趣味なんじゃ。普段から暗い洞窟で置物のようになっておられる方だから、羽を伸ばすにはいい大義名分という訳じゃ」

「それじゃ、散歩からずっと戻って来てないってことは、その時に何かあったってことですよね」

 仁がもしかしてすでに死んでいたらどうしようと不安になっていた。

「もし命に係わる事が起こったとしたら、それはわしらにでもわかるようになっておる。ニシナ様の魂は山と通じておる。ニシナ様が命耐えたとき、山の木々たちがざわめいて特別な信号を送るんじゃ。それがないところを見ると、ニシナ様はどこかで健在でいらっしゃる」

「それじゃなんで出てこられないんだろう」

 仁が頭を働かせている隣でユキが気がついたように言った。

「私、思うんだけど、ニシナ様はこれらの問題が起こることを事前に予測してたんじゃないかな。それで自ら姿を消して行く末を見守っているだけなんじゃないかしら。この出来事自体に意味があるってことなのよ」

「意味がある? まるでニシナ様が仕組んだことのようにも聞こえてしまうのう」

 セキ爺は興味深く聞いていた。

< 197 / 253 >

この作品をシェア

pagetop