恋の宝石ずっと輝かせて2
 クラスに戻れば、担任が来るまで騒がしく、皆この夏休みをどうするか好き勝手に話している。

 高校三年の夏休みといえば殆どが受験勉強で忙しくなる時期だ。

 旅行に行くような話よりも夏期講習や塾の強化合宿のようなプランに参加する話しが聞こえてくる。

 ユキは進路のことについて迷っているために、どこか聞きたくないような話に思えてならなかった。

「ユキ、何ぼーっとしてるの? 明日から夏休みだよ。今からボケてどうするの」

 高校二年からまた同じクラスになった矢鍋マリが、喝を入れるように側に寄って来た。

 最初は嫌われていたけど、前年トイラとキースがこの学校へやってきて一騒動があってからをきっかけに打ち解けた。

 その一騒動だが、この学校で起こったことなのにユキと新田仁を除いて誰もその事件を覚えていない。

 あんなに派手にトイラが黒豹、キースが狼になって暴れても、何も起こらなかったことになってしまった。

 あの忘れられない、そしてユキにとってとても大切な出来事なのに、ユキもまた皆と合わしてそれを思い出さないように日々を過ごしてきた。

 そんなときにマリと心を許す仲になれたことは、残りの高校生活を過ごすのにとても救われた。

 あれ以来お互い一番の親友として二人は仲がいい。

 マリは見かけはきついかもしれないが、いい風に言えば姉御肌でリーダーシップにすぐれていた。

 ずけずけと何でも言うところもあるが、それは信念を持った裏表のない真っ直ぐな性格。

 元々心はとても澄んでさっぱりとした人だった。

 マリはマリなりにユキが気になり、結局はおせっかいにも心配していた。

 ユキと心を通わせようと彼女も歩みより、ユキはそれに気がついて堅い殻を破って自ら飛び込んだ。

 一度打ち解ければ、お互い理解し合える仲になるのには時間がかからなかった。

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