つかまえた!

トラウマ

電車に揺られ

車窓からの風景を、ぼんやりと眺める。

彼女がこんなに田舎に住んでいたなんて………驚きだ。

見渡す限りの田んぼ道。

稲のない田んぼは、一面茶色をしていて

街中で過ごしてる僕からすると

少し物悲しいような、ノスタルジックにおそわれる。

電車が止まり、降り立った駅も古ぼけていて

昭和を思い起こさせる。

「……………………………映画のセットみたいだなぁ。」

思わず呟いてしまうこの町が

彼女の生まれ育った世界なんだ。

「すみません。
大野北って…………どちらに歩いて行ったら良いですか?」

駅員のおじさんに尋ねると

「大野北まで歩くつもりかい?
そりゃ、止めた方が良いよ。
山道をずっと上がって行くんだよ。
今から行ったら、夜になる。
お兄ちゃん、何処か泊まるところがあるのか?
ないなら、今日は止めて明日上がることを奨めるよ。」

えっ!!

更に山奥に進むのか??

泊まるところって……。

こんな事なら…………悠人先生の言葉を聞いて

車を借りれば良かった……………。

車中泊も出来ないって………どうしよう。

途方に暮れる僕の肩を

「…………………何しにこんな田舎まで来たの。」と

不機嫌な声の彼女が掴んだ。

「イテッ。」

思いっきり引っ張られてびっくりしたけど…………

一番安心する声だ。

「………………………みぃ。」
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