俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~

 


「穂積。帰るぞ」

バンケットルームの入り口のあたりに立つ穂積を見つけて声をかけると、彼は「はい」とうなずきながらこちらにやってくる。

「鈴花さんは?」
「今控室で着替えている」
「あぁ、あの絢爛豪華な振袖姿で自宅に連れて帰るわけにはいかないか」

穂積は納得したようにそう言ってから、ちらりと横目でこちらを見た。

「それにしても、そんなに不機嫌な顔をしてなにかあったのか?」
「別になにもない」
「ふーん?」
「なんだ」

人を観察して面白がるような視線が落ち着かなくて眉をひそめると、穂積は「いや」と首を横に振って短く笑う。

「普段感情を表に出さないお前が、そうやってわかりやすく不機嫌になるのは珍しいなと思って」
「だから、別に不機嫌なわけじゃない」

改めて否定した俺に、穂積はまったく信じてない様子で肩を上げた。



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