私の彼氏は真面目過ぎる!【完】

第二話 「住所? キミの心の中だよ?」

「風邪はもう大丈夫なの?」
「……うん、もう平気だよ」

 不自然な間。
 ちっとも枯れていない声。
 風邪なんて嘘に違いないと疑うことはできたはずだ。

 しかし不意打ちのバックハグで気をよくしたその夜は、いつも以上に日本酒が進んだ。
 翔馬が結構お酒に詳しかったのも手伝い、ハイペースで徳利が空いた。
 到底病み上がりとは思えない酒の進みようを、少しは変だなと思ったけど、翔馬はもともとお酒が強いと聞いていたので、無理やり自分を納得させてしまった。

 2時間経ったところで、翔馬は垂れ目をとろんとまどろませ、私の顔を無言で覗き込んだ。
「どうしたの?」
 すっかり打ち解けていた私は、もうよそよそしく敬語を使うこともなかった。
 ただし、イケメンに凝視されて私は動けなくなる。

 翔馬は目を逸らすことなく、そして照れることもなく、私の手に自分の手を重ねた。

「ひばりちゃんて、すーごく可愛いよね。俺、タイプだな」

……え、今、なんて?

 可愛いって言ってくれた、よね?

(嬉しいいいいいいいいいいいい!!!!!)

 めったに言われることのないその言葉に、完全に舞い上がってしまった。
 確かにこれまでの元カレがその言葉を告げてくれたこともある。
 しかし付き合うにつれ、可愛いと褒めてくれることはなくなっていくのが定例だった。
 最近めっきり言われることのなかった殺し文句に、私の理性は吹っ飛んだ。
 したがって、自ずと返答も挙動不審なものとなる。

「えっ、う、か、かわ、かわいいだなんて、うそ、うそ……! た、タイプ、なんて、」

「そういうリアクションが、ピュアで可愛くてたまんないんだよ」

 翔馬は私の頬を両手で挟むと、ぐりぐりと頬の肉を撫でまわした。
 甘い言葉に、ボディタッチ。
 そしてそのまま、私の顎をくいと片手で持ち上げた。いわゆる顎クイである。

「俺のこと、好きだよね?」

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