クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)

あの日から数日経ったが、向井さんになかなか会えずにいる。

そろそろ帰宅しているだろうと思う時間に彼の部屋を何度か訪ねてみたが、留守ばかりで何日も経ってしまい、『今日も会えなかったら、どうしようか』と考えながら、重い荷物を乗せた台車を押して、各部署を回っていた。

営業部の前を通り過ぎる際、彼がいないかチラッと確認するのも、何回目だろう?

いないな…

預かったニットの汚れは落ちてなく、よく見たらカシミヤで高そうだった。これ以上自分で洗うと、ドジな私なら、きっとサイズダウンさせたり、肌触りのよい毛並みをパサパサにしてしまって、ダメにしてしまう事を考えて、クリーニングに出した。

予定では、クリーニングからかえったら、すぐにニットを彼に返しに行って終わっていたはずなのに、まだ手元にあることに、なぜか落ちつかず、焦りが増すばかりだ。

会えた時に返せばいいだけなのに…

なぜ、こんなに落ち着かないのだろ?

「うわっ」

考え事をしていて、曲がり角の向こうで誰かが台車にぶつかりそうになったらしく、大きな声に慌てて台車の向こうに顔を出した。

「すみません、大丈夫ですか?」

「あー大丈、ぶ…あれ、莉子ちゃん」

爽やかな笑顔で馴れ馴れしく私の名前を呼んだのは…
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