Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
信頼できる人
あれから2ヶ月たって、フォルティスはうちの家族とすごく仲良くなった。

仕事帰りのカイと共に来て、一緒に夕食を食べて少しおしゃべりしてから帰る。

休みの日に突然来て、遊びに誘われたり。

オペラ、市場、公園とかいろいろな場所に連れていってもらった。

どこに行っても楽しくて、あっという間だった。

この関係はパッと見ると恋人同士だけど、私は自分の気持ちに確証が持てなくて、まだ好きだとは伝えられていない。

でも、そろそろ社交シーズンだから遊びに行く時間はなくなってしまう。

そう思うと、微かに寂しいと感じている自分がいることに気づく。

「それで、リリは俺にエスコートさせてくれるのかな?」

え?急に?全く聞いてなかったのは、私が悪いけど!

「ど、どうしてそんな話になったの?」

「リリ、ぼうっとしてて俺の話聞いてなかっただろ?

普通は兄や父が連れて入るが、君のお父さんは俺に譲ると言ってくれたぞ?

牽制しておきたいだろうからってな。」

いじわるそうに笑うと、私の頬っぺたをむにっと摘まんだ。

最近のフォルティスは、さらっと触れてくるから困る。

嫌じゃないけど、マリンがお茶を入れてくれていたりすると、ばっちり見られてしまうからだ。

「え!?牽制って?何を?」

話の内容の繋がりを見いだせなくて聞き返す。

「他の男をだよ。今さらか?

こんなに美人でかわいい人を、みんなが放って置くわけがないだろう?

だが、入るときから俺といれば、そんなこともないだろう。」

私が美人?

それは違うと思う。

「私に人が集まるのは公爵家の人間だからよ。

私に理由があるんじゃないわ。家柄よ。」

これまでの経験で嫌というほど分かっているわ。

「君の美しさは正当に評価されるべきだよ。

もう少し自分に自信がつけば、もっときれいになれるのに。

それに、周りの男も君の美しさに気づかないほど、ばかじゃない。」

自分に自信がないことを今までも、家庭教師の先生に何度も指摘されてきた。

「かわいいかわいいばっかりで、美しいと言われたのは初めてよ。」

「見た目はかわいいかもしれない。

けれど、内面の美しさを美しいと褒めるためならばかわいいという言葉は似合わない。

リリの強い意思と気高さは凛としていて美しい。

幸せそうな笑顔も、明るい笑い声も、知的さも、思いやりに満ちているところも、リリの全部が好きなんだ。

俺は他の人にリリの魅力を伝えたい気持ちと、隠しておきたい気持ちで複雑だよ。」

そう言って、ふてくされた顔をしてみせるフォルティスを見ていると、そうなのかもしれないという希望が少し沸いてくる。

気が緩み、聞かないようにしていた恥ずかしい質問が口から出てくる。

「どうしてフォルティスがそんなに好きでいてくれるかが分からないの。

最初に会ったのはいつなの?

私は忘れてしまったのかしら。」

「そうだな。そろそろ全部話すべきだよな。

最初に会ったのは、スラムだよ。

俺が10歳の時だ。

君は干ばつによって餓死者が出たから、スラムに慈善事業として、穀物や水、薬を持ってきてくれたんだ。

あの時は君のお母さんもいて、まるで天使たちが天から降りてきたみたいだったんだぞ?

それで、ケガが化膿して熱が出ていた仲間のために、薬をもらいに行ったんだ。

君は渡して終わりにしようとしないで、水やきれいな包帯もくれた。

そのおかげで仲間は死なずに済んだんだ。

熱が引くまでの3日間、毎日通ってくれた。

自分のおやつに出ていたサンドイッチも持ってきてくれたり、果物を買って、俺たちにまで分けてくれたり。

本当に優しかったんだ。」

私、、、そのことは記憶に残っていたけど、、、

まさか、その時の1番年長の男の子がフォルティスだとは思わなかったわ。

「あの時の男の子だったの、、、?

私、あなたたちが、仲間の命を大切にしようとしているのが本当に羨ましくて、キラキラして見えたのよ。

同い年の子たちは、私の機嫌を損なわないかびくびくしていて、友達にはなれなかったもの。

だから、ケガをしていた子が治ったときに、あなたに仲間だって言ってもらえてすごく嬉しかったのよ。」

そう。

フォルティスはケガが治った男の子のお礼を言いながら、私も彼らの仲間として認めてくれたの。

なんで忘れていたんだろう、、、

「ああ。すごく嬉しかったのは俺もだよ。

君がこんな平民さえも見放さないでくれたのがね。

偉そうに仲間だと言ったのは、今思い出すと、すごく恥ずかしいけれど。

だから、俺は君に憧れていたんだ。

そして、もう一度会いたいとも思っていたな。

助けられるだけではなく。

より近い距離でね。」
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