Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
「えぇ、ありがとう、お父様。」

ソファーから立ち上がってお礼をする。

「ここからはリリ想いのお父様がフォルティスに今すぐにでも連絡を取らなきゃいられないようにしてやるよ。

かわいい娘を泣かせた罰だな。






それと、久しぶりにシェリー様に会ってきたらいいんじゃないか?

おまえもすごくなついていたじゃないか。

結婚したら、そんなに簡単に遠出できなくなる。

いい機会だと思うぞ?」

フォルティスへの罰の内容が分からなくて怖いけれど、確かにシェリー様に会える機会は滅多にない。

シェリー様が嫁いでしまってからはお仕事が多くて、外交でカリオス帝国に戻っている期間でないと会えない。

ここ5年くらいは会えていないので、会いたい気持ちが大きい。

「えぇ、そうしようかしら。

私が結婚する前に、会いたかったの。

シェヴァ王子にそうお手紙を送るわ。」

すっきりした気分で部屋に戻り、朝イチでシェヴァ王子宛の鷹便を送るために急いで手紙をしたためて、マリンに預けた。

相当シェヴァ王子に嫉妬していたのに、けんか中でフォルティスと会わない間に、カリオス帝国に入ることを言わないでいるのを申し訳なく思うけど、きっと気にしてないだろうと思い直す。

「明日、朝イチで送れば正午前には着くそうです。」

「そうなの?ありがとう!

お返事が来次第だけど、カリオス帝国に行ってシェリー様に会ってくるわ。」

うきうきして、眠れなくなってしまいそう。

「そうですね。

いい気分転換になると思いますよ。」

優しく微笑んでくれるマリンの優しさが嬉しくて、涙が出そうになる。

「もー、マリンいつもありがとう!

これからもめんどくさい私のことよろしくね。」

ぎゅーっと抱きつきながら感謝の気持ちを伝える。

「こちらこそ、いつもありがとうございます。

私は動ける限り、こんなにいい主の元を離れませんよ。」

そう言って花瓶の水を替えに持って出ていった。

じっくり考えてみると、何も返事をくれないのだから、許可なく外出したとしても怒られる筋合いはないのだと思えた。

2、3着のドレスとそれにあう装飾品をクローゼットから持ってきて並べる。

ハンガーに掛けてシワを伸ばしたり、リボンの寄りを戻したりあわただしく動いていると、どんよりとした気分も薄れて、支度が楽しくなってきた。

何度か手伝ってくれていたマリンも少し笑顔を浮かべて、安心したように出ていった。

次の日の朝、起きると返事が来ていたので、正午過ぎ、天気がよくなってから出発することになった。

順調に領内を抜けて、国境近くの宿で1泊した。

王家御用達の宿屋は旬の山菜や鹿肉をふんだんに使っておいしい鍋を作ってくれていた。

まったりとした時間を過ごし、旅の楽しさに浸ることができた。

温泉も湧いていて、マリンと一緒に外湯を楽しんだ。

快適な布団でぐっすり寝て、峠を越えるため早く出発した。

マリンにシェリー様のおもしろい話を聞かせていると、馬車の外が一瞬騒がしくなり、次の瞬間には止まった。

険しい顔のマリンは顔を見せないように、と私に言うと、カーテンを少し開けて外の様子を覗いた。

驚いた顔をして、本当に追いかけてくるなんてと呟くと、扉を開けてくれた。

マリンの意味不明な行動に目を白黒させていると、外から大きな声がした。

「リリ!いるんだろ?降りてこい!」

フォルティスの本当に焦っているような声がして、びっくりして出てしまった。

山の少し開けたところに馬車は停まっていた。

そこには、カリオス帝国側の護衛の1人が腕を抑えてうずくまっていた。

フォルティスは片手に抜いた剣を持ち、簡易の鎧を着ていた。

警戒したような護衛の人たちに囲まれているのに、私から目を離さない。

「ど、どうしてここにいるの!?

遠征中なはずでしょう?」

すっとんきょうな声が自分の喉から出た。

「抜けてきたんだよ。

おまえが国境を抜けた後じゃあ連れ戻せないからな。

とりあえず降りてこい。」

フォルティスが護衛たちをどかして私の前に立つと、護衛長が声をあげた。

「お待ちください。

あなたが騎士団の団長である証はどこにありますか?

素性も分からないやつに、王家の預り人を渡すわけにはいきません。」

確かにそうだと思ってフォルティスを見ると、ぶすっとした顔で指輪を見せた。

この国の国花である鈴蘭が幅広な銀の指輪に彫られている。

「鈴蘭の指輪と、、、後はおまえたちの方が分かるだろ。

返してもらえるか?

ことを荒立てたいわけじゃない。」

フォルティスが落ち着きを取り戻していうと、護衛長がうなずいて言った。

「確かに騎士団長だとお見受けしました。

しかしなぜ彼女を?」

そこは私も最初から気になっていた。

フォルティスはなんでこんなところまで会いに来たのか。

手紙は送っておいたけど、こんなに早く着けるはずはない。

いろいろ不思議なことはあるけれど、降りてこいと言ったフォルティスが怒っているというよりも焦っているように見えたのがよくわからなかった。

「婚約者が浮気しに行くのを阻止しようとしただけです。」

きりっとした顔でぶすっとしながら言うので少し笑ってしまった。

フォルティスは大きな勘違いをしているみたいだ。

「え?」

護衛長の人もついうっかり、間抜けな声を出してしまっている。

びっくりして反応が少し遅れたけれど、慌てて弁解した。

視界の端でマリンが笑いを堪えているのが見えた。

「私、昔から仲良くしてもらっていたシェリー様に会いに行くのよ?

浮気なんてする予定ないわ。」

「その参加するパーティーがお見合いなのか。」

会話が全く噛み合わない。

「え?フォルティス誰に何を聞いたの?

お見合いパーティーじゃないわよ。

招待されているのだって国境近くの離宮だし。

人なんて集めないわ。」

そう言うとはっとした顔をして、そろりそろりと2、3歩下がった。

「ごめん、シェヴァ王子とデガン様に騙された。

俺は、リリがシェヴァ王子の開くお見合いパーティーに招待されて、参加することにしたってデガン様から聞いたんだ。

それに、シェヴァ王子からもリリと俺、2人宛に招待状が来てたんだよ。

だから、俺は仕事で参加できないのにリリが参加しに行ったのかと思って、、、

もう見限られたのかと思ったから、、、」

言っているうちにどんどん声が小さくなっていって、最終的には黙ってしまった。

弱々しいフォルティスに笑いが浮かぶ。

「そんなことしないってば。

フォルティスは心配し過ぎよ。」

「あぁ、俺はどんだけ自分に自信がないんだろう。

だから、リリが嫌いになるんじゃないかとか、他の男の所に行くんじゃないかとか思うんだろうな。

本当に疑ってすまなかった。」

しょんぼりとしているフォルティスをカリオス帝国の護衛の人たちは珍しそうに見ている。
< 50 / 51 >

この作品をシェア

pagetop