鬼畜な兄と従順な妹
気付いた気持ち ~真一Side~
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「幸子は、どこにいますか?」

「たぶん、体育館だと思う」

 車は学校に戻り、門を入って体育館の前で停まってもらい、俺は車から飛び出した。そして体育館に駆け込んだが、誰もいなかった。

 ここじゃないのか? いや、あそこかもしれない。それは用具置き場で、鉄の扉が閉まっている。あの中かもしれない。あの中で幸子は……

 つい浮かんでしまった最悪な光景を、頭から消し去るようにして俺は走った。そして扉を勢いよく開けると、薄暗い中に立つ、3人の男子生徒が目に入った。

「何やってんだよ!」

 俺がそいつらへ迫ると、そいつらは後ずさり、床に横たわる幸子の姿が見えた。幸子は、ブラウスの前が無残にはだけ、ぐったりしていた。と言うか、まさか……

 俺は腰を屈め、幸子の口の前に顔を近付けた。すると、幸子は息をしていた。意識はないようだが。
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