異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
君の名は?
婚約者?
ええと、どこからツッコんでいいのかわかりませんが。
いつ婚約したのか?そもそも、恋愛や結婚など許されない身なので、それは絶対に無理。
………いや、待って?
3日前に行方不明になった、って言ってたよね?
てことは、誰かと間違えられてるんじゃ……?
婚約者の人と私の顔、似てるのかな。
頭から本人だと疑いもしないなんてちょっと信じられないけど、婚約者が間違えるくらいだし、きっともの凄く似てるんだろう。
別人です!って、はっきり説明した方がいいのかな。
だけど、説明して納得する?
死にかけて錯乱したと思われてもイヤだし。
……………………………。
……よし………少し様子を見よう。
周りは海だらけ、陸はない。
逃げるところはないし、ここから追い出されればきっと死ぬ。
なら、婚約者の人には悪いけど、ちょっとだけこの立場を利用させてもらおう。
見るからにこの男、ヒサギさんは偉い人だ。
その婚約者のふりをしていれば、そんなに困ったことにはならない……はずだけど、まだ不安要素はある。
その婚約者のこと知らないからね。
バレないようにするには記憶喪失という万能設定を追加する必要がある。
とりあえずこれで行こう!

「ああっ……思い出せない……私は……誰なの??ここはどこ!?」

生まれて初めてした演技は、驚くほどヘタクソだった。
まぁ、この際そんなこと気にしない。

「そうか……やはり。君の名は百瀬(ももせ)すずな。亡くなった百瀬大将の一人娘だ」

幸運にもヒサギさんは、私のヘタクソな演技を信じ込んだようだ。

「ももせ、すずな?ももせ、大将?」

「そう。百瀬大将が亡くなり、跡をついでオレがここ那由多(ナユタ)の提督になった……那由多はわかるよな?」

なゆた?わかりません、初めて聞く言葉です。
私が首を横に振ると、ヒサギさん改め提督さんは、はぁとため息をついた。

「本当に何も覚えてないんだな……戦艦島那由多(ナユタ)、終末を生き残るために造られた島のような戦艦だ。もう地球上に陸はない。ここで生きるには戦艦島に乗るしかない」
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