過去の精算

「ゆっくり動くけど、多分痛みはまだあると思う 大丈夫か?」

「前谷君と一緒なら大丈夫」

彼のモノが出入りする度に、浴槽の湯は大きな波を打つ。
何度も名前を呼ばれ、何度もキスをされ、次第に痛みだけではなく快楽を感じ、自分ですら知らない恥ずかしい私の声が浴室に響く。
恥ずかしさと快楽に、彼へしがみついていた私を、苦痛とも快楽とも言えない顔をした彼は、急に私の体を引き離した。

え?

そして私の肩に頭を預けたのだ。

「前谷君…大丈夫?」

「ああ、大丈夫だったと思う。多分」

「なにが?」

「ぎり、中には出して無いから」

「なにを?」

「だから…中出しはしてないって事。
未琴、小学生の時に保健体育で習ったろ?
雄しべと雌しべの話?」

「実を付けるにはって話?」

「・・・・・」

「違うの?」

「もう一度、小学生から勉強して来い」

「え? なになに?
私、5教科しか勉強して来なかったし、小学生の頃は成績よくなかったの…」

「未琴が成績悪かった? 嘘だろ?」

「小学生の頃はね…
高学年の時は中学生の勉強してたし…」

中学受験する訳じゃなかったけど、母は、先の先まで私に勉強させていた。
お陰で、中学、高校の三教は、いつもほぼ満点だった。

「なぁゴムって知ってるよな?」

「輪ゴム?」

「コンドーム!」

「あぁー聞いた事ある。
性病予防の為のものでしょう?」

「まぁ間違いでは無いけど、普通は避妊具だろ?」

「そうなの?
だって誰も教えてくれないし…」

「保健体育で教わったはずだけどな?」

勉強は一生懸命やって来たつもりだったけど、なのに当たり前の事を知らないなんて…
私、なにを勉強してきたんだろう。
なんて、恥ずかしいんだろう…




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