希望の夢路

妹のような彼女

僕と彼女は、真新しい建物の前で立ち止まり、空を仰いだ。
「すごい、綺麗」彼女は目を瞬かせた。
「本当だ…すごいね」僕も驚いた。
僕は彼女の手を引き、中へと入った。
中へ入り受付に向かおうとした。が、何か寂しい。

何だ、この違和感は。手から温もりが消えたー

「あれ?心愛ちゃん?」
彼女が、いない。さっきまで隣にいたはずなのに。
どこへ行った?
「あ…いた」
彼女は、この美術館の入り口付近の右奥にある、
こじんまりとしたカフェを興味深そうにきょろきょろと
周りを見渡しながら歩いていた。
「…全く、もう。世話が焼ける…」
子供じゃないんだから…。目を離すと、いつもこれだ。
子供のように、無邪気に歩き回る。
そこも彼女の魅力だけど、何も言わずに勝手にいなくなるので心配になる。
お願いだから、心臓に悪いことはしないでくれよ。
でも、そういうところも好きだから、世話が焼けるといっても、嫌ではないんだけど。

「こーこーあーちゃーん」
僕は、カフェの中央に立ってカフェ全体を見渡す彼女のもとへ走った。
「あっ、ひろくん!」
彼女は僕に笑顔を向けた。
「こーら、すぐにいなくならない」
僕は彼女の頭をぽんぽんと撫でた。
「ごめん。でもね~」
「カフェに行きたかったら、後で行くから。とりあえず受付」
「あっ、そうだった。すっかり忘れてた」
「ほら、行くよ」
「うん…!」
僕は彼女の手をしっかりと握り、受付カウンターへ歩き出した。
「大人二人で」
「はい、かしこまりました」
受付嬢がにこりと微笑む。
とても綺麗な女だな、と思っていると、彼女が急に僕の手を放し、走り出した。
「えっ…!?心愛ちゃん…?」
彼女の姿は、既になかった。
「全く、手のかかる…。僕から手を放すなと、何度言ったらわかるんだ…」
僕は独り言を呟いた。
「良いですね、仲がよろしいようで」
受付嬢が僕に言った。
「ええ、はい、まあ…」
僕は頭を掻いた。
「ごゆっくりどうぞ」
受付嬢は、笑顔で僕を見送った。

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