この溺愛にはワケがある!?

彼は友達?

それから一週間、隆政は約束通り職場には来なかった。
来なかったが、その代わりメッセージは朝昼晩と必ず送ってくる。
既に『余計な連絡はしない』という約束は破られているのだが、彼にとってそれは余計な連絡ではないらしい。
約束違反を指摘した美織に対して『余計じゃない!必要だ』と譲らなかった。
メッセージなど、ほとんど寧々からしか来ない美織のスマホは今、隆政のメッセージに埋め尽くされている。
そして恐ろしいことに、だんだんとこの状況に慣れていく自分がいるのだ。
たまにメッセージが来ないと、あれ?と思うことがあり、隆政は実はとんでもない策士じゃないかと思ったりもしていた。

「あ、ポンコツさんからですか?」

軽快なスマホの音に反応して、寧々が箸を持つ手を止めた。
昼休み、今日芳子は細川と昼当番で、美織は寧々と二人だけでお弁当を食べている。

「そ。マメよね?友達でこれだから、彼女になんて一時間おきとかなのかな?」

寧々は、大概美織も鈍いと思っている。
「友達としてなら」という一連の流れを聞いて、隆政が本気で美織をロックオンしていることに気が付いたのだ。
ただの友達と思っている異性に、そんなにメッセージを送ったりはしない。
まぁもともと、メッセージをあまり送らない美織にしてみれば、どのくらいの頻度で送ってくるのが普通なのかなんてわからないだろう。
ただ、美織が困ったことにだけはならないように、出来るだけ注意深く見守るつもりでいた。

「で、今日はなんて送って来たんです?」

「え?うーん……出張でシンガポールに行ってて、お土産何がいいかって」

それ、もう彼女じゃねーか!!と、寧々は声を大にして言いたかった。
が、美織の神経を逆撫でしてもいけないので、そっと口をつぐむ。

「……へぇ、それで美織さんはなんて返したんですか?」

「マーライオン」

「え?………マ、マーライオン?」

「そう、小さいやつじゃなくて本物っぽい大きいやつ!」

「……………で、ポンコツさんは?なんて?」

「わかった、待ってろって」

「……………………………」

すまして語る美織からは、全く冗談を言っている感じがしない。
むしろどうにかして隆政を困らせてやろう、という気概に溢れ、生き生きとしている。
なんだかこれはこれで楽しそうだな、と、寧々は少しホッとした。
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