王女にツバメ

ブチギレていた。
こっちが黙っていれば、調子に乗ってんなよ。

琉生からの連絡を無視し、家にも帰らず職場の最寄り駅近くのホテルに連泊していた。
家に来られて居留守を使う勇気がなかった。

初めの内は電話もかかってきたり『大丈夫?』とメッセージが着ていたけれど、数日でなくなった。それくらいの存在だったんだろう。

「好きな場所に飛んで行けば良いよ」

それで良い。
寂しさを埋めたのはあたしで、きっと罰を受けるだろうと思っていた。

そういう出会い方だった。

大切なものが何もない人間もきっと、大切なものがある人間くらいには、強い。





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