ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
第五章 気持ちの変化

翌日は検査がお休みだったので、リラと一緒にしばらく滞在するカサンドラの街中を見て回ることにした。

リラはもちろん、生まれ育ったルメール村から殆ど出た事のなかった私も、カサンドラに詳しくない。

レオンは何度か視察で訪れているそうで、案内役として私達の散策に着いて来ると言い出した。

遠慮したけれど「イリスたち二人では危ない」と護衛役を務めると言い気持ちを変えてはくれなかった。
私としては皇帝のレオンが一緒の方が危険なのではないかとハラハラする。

ここは帝都ではないけれど大きな町だ。皇帝の顔を知っている人がいないとは限らない。

また、ラヴァンディエの皇族や貴族に多い銀の髪も目立ってしまうのではないか。

石畳で出来た通りをちょこちょこと進むリラの銀の髪は、太陽の光を受けてキラキラと煌めいている。

小さな後ろ姿を眺めながら、私は独り言をつぶやいた。

「ここに居る間は、リラの髪を染めた方がいいのかな」

少し先を進んでいたレオンが、私の声が聞こえたようで振り返った。

「そこまでしなくていいだろ。イリスが心配する気持ちは分るが、カサンドラは多くの観光客が集まるところだ。リラのような髪の子もそれほど珍しくはないからな」

「でも……貴族も来るならますます心配なのでは? レオンの顔を知っている人だっているかもしれないし」

リラはレオンに似ているから、勘の鋭い人なら皇帝との関係を疑うかもしれない。

やっぱり街中に出て来たのは間違いだったのだろうか。

ずっと病院に籠っていてはリラもつまらないだろうと思ったのだけれど……。

「大丈夫だ。今の俺を見て皇帝だと思う奴なんていないだろうし、そもそも皇帝がこんな所で呑気に散歩をしているなんて思わないだろ?」

「それは……そうかもしれないけど」

私はレオンの姿を改めて眺めた。

無造作に額を覆う銀の髪に、簡素な半袖のシャツに胸当てといったよく見かける護衛役の服装をしていて、以前即位の際に出回った絵姿の皇帝レオンとは別人だった。

余程間近で彼を見ることが叶う人でなければ、その正体に気付かないとは思う。

それでも楽観することは出来なかった。

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