簡単なレジ作業かと思っていた弥生は、こんなに大変なものなのかと青くなった。


一通り作業を終えた休憩中、弥生はため息をつく。

レジ作業をしたが、その間にも商品の場所を訊ねられたり商品自体の説明を求められたり。
薬については薬剤師の後台と津田や静に回せばいいが、レジ中の客との兼ね合いは弥生次第だ。


レジを離れ品だしもチャレンジしたが、ドリンク類は重いし紙類は箱が大きい上に、これも重い。


「ドラッグストアって力仕事が多いんですよ。面接で重い物は持ちたくない、レジも品だしもやりたくない。だけど薬売りはやりたいという方もいますけどね」


薬剤師の後台がトイレットペーパーを売り場に並べ笑う。
品ある上に、どことなく優雅さの漂う男だった。



「後台さんがドラッグストアを選んだ理由は、なんですか?」


弥生がボックスティッシュの入った段ボールから、棚へ並べる。
軍手を嵌めた手で汗を拭う。


「病院の調剤室にいたこともあったんですが、経営に興味があって。あちこち店を変えて、ここへたどり着きました」


後台は答え、津田との出会いが大きいと付け加える。


「津田さん、前は大企業の営業マンだったらしいです。でも、穣くんのために転職したとか」


あのトーク力、リーダー資質はそこから来るのかと弥生は心底、納得した。


「穣くんといえば」


後台が腕時計に目を落とす。



「そろそろ穣くんのお迎えに行かないと」



休憩時間に子供のお迎えに行き事務所で仕事をしながら過ごし、スーパーのお弁当を食べて帰りに食材を買って。

公園で遊んでから帰り、風呂に入れてから眠る。

そしてまた朝が来て朝食と弁当を作り、幼稚園に送り届けるという日常を、津田は繰り返しているのだという。

休日には穣を連れて買い物をしたり遊びに行ったりして過ごしている。

見兼ねた静と後台はフォローを申し出て、幼稚園のお迎えやイベントなどを手伝っているそうだ。



「津田さん、そのうち倒れますよ」



京香が化粧品の陳列棚を、使い捨てワイパーで掃除しながら云った。



「そうなったら穣くんは、おれが引き取ります」



涙を拭うふりをしながら、後台がハンカチを目に当てる。
しかしその笑顔に見える細い瞳のせいか、悲しんでいるようには見えなかった。


「勝手に殺すな」


売り場を見回っていた津田がいつの間にか後ろにおり、ため息をつく。



「後台、おまえに引き取られるくらいだったらなあ」
「あたしが育てましょうか」


静が無表情に答え、津田は憮然と腕組みする。


「そういう問題じゃない」


三人のやり取りに弥生は小さく吹き出した。


「皆さん仲がいいんですね」