穣は今日は幼稚園のお泊まり会だ。

津田、後台、静、弥生の四人は居酒屋に集まっていた。
この日は後台と弥生は休日、津田は遅番、静は早番だった。



「ずいぶんと遅くなってしまいましたが、弥生さん。ドラッグストア『ナーキア』へようこそ」



四人の都合がようやくついて、弥生の歓迎会が行われたのである。



「後台さん、スーツですね。何か用があったんですか」



弥生を含め三人は、それぞれラフな私服だった。
斜め向かい側の後台に訊ねる。


「気合いを入れて参加しました」


テーブルを挟んだ静を見つめるが、静は無表情に後台を見返している。
つまらない、面白くない、スベっていると無言で云っていた。



「……嘘です。実家の野暮用です。無事に終わりました」



後台は悲しげにお手拭きで手を拭き、ノンアルコールビールを注文する。
津田も同様だ。



「子供は急に、迎えに行かないといけない場合があるからな。備えないと」



後台は笑顔に見える顔のまま頷いたが、どこか申し訳なさそうだ。

一方で静は、注文したビールを遠慮なく呑んでいる。


「そうですか。ああ、仕事あがりのビールは堪んないです」


静は遠慮なしにジョッキを傾けている。

早々にジョッキを空にしてテーブルに置き、さらにおかわりを注文する。
そんな静に釣られて弥生もつい、生ビールを飲んでしまった。



「ところで弥生さん、ずっと気になっていたんですが」


静が枝豆に手を伸ばし、口へ運ぶ。



「どうして専業主婦、やめたんですか?やっぱり、老後不安ですか」
「それは……」



弥生は専業主婦に負い目を感じていたことを話した。



「考えすぎ。あたしは専業主婦は、素敵だと思いますよ。結婚して家事に専念なんて、最高じゃないですか」



正直、弥生は驚いた。
静は働く女性最前線に見えていたからだ。



「女の社会進出なんて、一部を除いて安い労働力を増やしただけですよ。この類いの煽りを受けるのは結局、女です」