弥生が選んだ働き先はドラッグストアだった。


運動不足解消に体を適度に動かす仕事、そして特別な資格はいらない働き口を探していた。

学生時代に飲食店も働いていたことはあったがどうも馴染めなかった思い出があり、品出しをしたりレジを打ったり、そういう仕事に興味を持っていたので決めたのだ。


郊外の商業施設の中にある大きくもない小さくもない中規模の店舗で、自宅マンションからは車で二十分くらいの場所にある。

複数の店舗が入っているので駐車場は広い。
自動車は千台、自転車は三百台ほどの駐車スペースがあった。


だが弥生自身は今まで、そこを利用したことはない。


というのも車は一台所有しているが、彼女の夫が通勤に利用しているからである。

もっと近場で生活用品は買える店舗はあるし、普段の弥生は自転車とバスで行ける範囲で買い物を済ませていたから、あまりそちら方面へ出かけることは少なかった。


行き先に向かうバスのなかで、四十過ぎの働いた経験のほぼない女を雇ってもらえるか、不安で仕方なかった。


会社とて若い人材の方が良いに決まっている。


電話ではすでに申し込み履歴書は既に輸送済みである。
面接日を決め、弥生は今日それに向かう途中だった。

バスに揺られ何気なく外を見ると一台の海外メーカー製の、銀色のセダンとすれ違う。

ナンバープレートを何気なく見て、あっと声をあげる。

夫名義の自分の家の車だ。


え………


弥生は再び見てしまった。

助手席に女性が乗車している。

今日は会議があるので帰りは遅いと云っていた。

遅いどころか今日は休日だったのかもしれない。

というのも一瞬だったが夫は私服だったのだ。
スーツで仕事で向かった夫のはずが、私服に着替えている。

弥生は殴られたようにショックを受けた。

舌の根も乾かぬうちに、とは正にこの事であろう。

面接だと緊張していた自分とは別の不安と怒りが一気に弥生に押し寄せる。


今日は最悪の人生の転換期になってしまうかもしれない。