はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
なにも出来ずに座っているだけの私にそのスタッフの男性は「失礼します」と頭を下げて、まずテーブルクロスを敷く。

その後、料理とカトラリーなどが次々と並べられていく。最後にワインクーラーにロゼワインが入れられた。

それをグラスに注ぐために持とうとしたが、支配人に制止される。


「自分でやるからいいよ。ありがとう。終わったら、連絡するね」

「はい、かしこまりました。では、ごゆっくりお召し上がりください」


スタッフは丁寧に頭を下げて、出ていこうとする。胸に付いていたネームプレートには『レストランチーフ 中島』と明記されていた。


「あ、ちょっと待って。横川さん、アルコールは飲める?」

「はい、飲めます」

「うん、良かった。中島チーフ、下がっていいよ」

「はい」


私が飲めなかったら、別の飲み物を用意しようとしたようだ。

中島チーフは再度頭を下げてから、出ていった。ドアが閉まってから、支配人は私の前に腰を下ろす。


「じゃあ、いただこう」

「はい。あの……」

「なに?」


グラスにワインを注ぐ支配人を見ながら、私は口を開いた。


「まさかここで食事だとは思わなくて、びっくりしました」
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