はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
触れてくれますか?
この日の夜、彩音と最寄り駅反対側にあるエスニックレストランに入った。

プリっとした海老が入った生春巻きを味わっている時、彩音が退社間際のことを教えてくれた。

配属初日の今日は定時で上がれるだろうからと更衣室で待ち合わせたが、彩音は遅れてきた。理由は片瀬さんに呼び止められたから。


「あと30分くらいで上がるようにするから、ホテルのラウンジで待っていてくれないかと言われたんだけど、予定があるからと断ったの」

「えっ? 私との予定よりも片瀬さんを優先して良かったんだよ? 積もる話があったでしょ?」

「でも、今日の今日で話をする心構えが出来ていないもの。本当にまだ同じ空間に湊人さんがいるのが信じられなくて、似た別人じゃないかと何度か確認しちゃったくらい……」

「彩音って、積極的なのかと思ったけど、恋には臆病なの?」


せっかく再会出来たのに、ふたりで話すことを恐れているように見える。会いたいと願っていた人に会えたのだから、いっぱい話をしたらいいのに。


「会えたのは嬉しいけど、一度振られているから、怖くなっちゃうんだよね」
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