俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「下」
恋人の苦しみを思うと、辛い
空は、俺にふさわしい曇天だ。重苦しい黒い雲が、まるでこの世の全てを支配するかのように、彼方へ広がっている。

クリスタルを誘拐した俺は、休むことなく馬車を走らせる。馬車の中が思ったより静かなので、クリスタルは目を覚ましてはいないようだ。

三時間ほど馬車を走らせると、俺がクリスタルの監禁場所として選んだ古城が見えてきた。

この古城は森の中にある。いつの時代のものなのかはわからないが、とにかく古い。

背の高い木々に覆われているので、簡単には見つからない。クリスタルがどれだけ泣こうが喚こうが広い城の外に声が漏れることはない。誘拐犯には好都合の場所だな。

馬車を止めると、クリスタルを押し込めたトランクを開ける。クリスタルは目を覚ますことなく眠っている。のん気なものだ。

クリスタルを抱き抱え、俺は城の中へと入る。城の中には驚くほどの数の調度品が残されている。ここなら俺も生活には困らない。

俺が使う部屋以外は掃除しておらず、家具はほこりを被っているが、問題はない。
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