仮想現実の世界から理想の女が現れた時
東京見物
浅草寺近くの駐車場に車を止め、俺たちは、仲見世商店街をのんびりと歩いた。

「外国の方もたくさん来てるんですね〜」

瀬名は楽しそうにキョロキョロと両側の店を覗きながら歩く。

「そうだな。
瀬名は、浅草、来た事あるのか?」

「入社してすぐの頃に、同期何人かと来ました。
田中君は地元なので、いろいろ案内して
くれたんですが、私は後ろを付いて歩いてた
だけなので、どこをどう行ってそこに行った
のか、さっぱり覚えてないんです。
あ、なんなら、今から、田中君、
呼びましょうか?」

そう言ってスマホを取り出した瀬名は、今にも田中に電話しそうな勢いだ。

「いや、いい。
休日に上司に呼び出されて、東京見物の案内
なんて、迷惑以外の何物でもないだろ?」

この状況で田中を呼ぼうとするなんて、デート気分なのは、俺だけか。

「そうですね。
っていうか、私はいいんですか?」

「瀬名は、呼び出されたわけじゃないだろ?」

「あ…、そうでした。」

瀬名は、思い出したようにうなだれる。

「くくっ
お前、当分、禁酒な。」

「えぇ〜!?」

「当然だと思うけど?」

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