Legal office(法律事務所)に恋の罠 *番外編~ジェラシーは内密に~

ジェラシーの渦に呑まれて

「Mr.ファン、本日は当ホテルをご利用頂き、誠にありがとうございます。林美麗の件ではお世話になりました」

グランドスイートを訪れた奏は、Hotel Bloomingホールディングスの会長である父、桜坂駆と共に、アジアの首領、ファン氏に挨拶していた。

日本贔屓であるファン氏は頻繁に日本を訪れており、日本各地の土地開発事業にも積極的に取り組んでいる大物だ。

「ああ、あいつは日本国外退去にしたよ。もう心配はいらない。・・・ところで奏、君のフィアンセにはいつ会わせてくれるんだい?」

「明日の10時を予定しておりますがご都合はいかがでしょうか?」

奏が恭しく頭を下げると、満足したようにファン氏が頷く。

「それで構わんよ。ああ、彼女には明後日のパーティーにも是非参加してもらおう。明日、私からその話をするから奏からは何も言わないように」

念を押すファンの表情は、何かを企んでいるように見えた。

「明後日は、私の息子と娘も連れてくるつもりだ。楽しみだな。おもてなしを期待しているよ」

「はい」

世界各地をまたに駆けるファン氏は、それこそ世界各地に愛人がいる。

勿論、その愛人には子供もいるわけで・・・。

日本国籍を持つファン氏の子供は5人。

男性が3人と女性が2人だ。

いずれも母親違い。

しかし、ファン氏の子供たちに向ける愛情は画一で、経済的支援も、仕事への口利きも平等になされているという噂だ。

明日はともかく、明後日はHotel Blooming 東京の威信をかけたおもてなしの場だ。

駆と奏は再度、ファン氏に頭を下げるとグランドスイートを後にした。


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