俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
お試し2:ほかの人と


あのあと広瀬さんにお礼のメールを送ったものの、特に会話が繋がるわけでもなく、休みが終わってしまった。

ほんの少しの甘い言葉も次に繋がる誘いもない。あっさりとした態度は軽い人ではない以前に、ただ私に興味がなかったのかもしれない。

「おはようございます」

週明け。すでに電気がついた事務所へ入ると、入り口から仕切りで見えないようになっていた給湯室からひょっこりと誰かが顔を出してきた。

「やっと来た! 待ってたのよ、百音!」

顔を出したのは愛海だ。給湯室でポットの準備をしてくれていたらしいが、ガタガタと音を立てて慌てて準備を済ませると楽しそうな笑顔を向けて私のそばへやって来た。

「ね、広瀬さんとはあれからどうなったの!? ふたりで帰ったでしょ!?」

「え、えっと……」

「直接聞こうと思ってメッセージ送るの我慢してたんだから。ちゃんと教えてよ?」

勢いに押される私の腕を取り、部屋の隅まで連れて行くと尋問をはじめる。

「お、教えてって言われても……」

なにを言ったらいいのか。なにか期待されている気もするけれど、それに応えられるような進展はない。そもそも愛海の気持ちがどうなのかわからない。

たずねようと思っていたけれど、休み中は私自身の気持ちもハッキリせず、メッセージを送る余裕もなかった。

「タクシーで家まで送るって言ってたけど、そんなはずないよね? 広瀬さん、ずっと百音のそばでいたし、狙ってた感じだったし」

「私の隣にいたのは、ただお酒が飲みたかっただけじゃないかな」

恋愛っぽい質問はされなかったし、狙われていた感じは微塵もなかった。いいと思ってくれているなら、お礼のメールを送ったときに次に繋がっている気がする。それがない今、興味を持たれていないとわかって私の気持ちも落ち着いていた。

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