「えっ、広瀬さんと付き合うことになったの?」

次の日。出勤したばかりの更衣室で報告すると、愛海はロッカーの中へ入れようとしたバッグを落としてしまった。

「愛海、声が大きいから……」

いつ誰が出勤してくるかわからない。小声で注意して手元から滑り落ちたバッグを愛海の元へ戻すと、心ここにあらずといった状態で中に入れていた。

「へぇ、よかったじゃん。いつの間にそんな仲になってたの? まだ連絡取ってたんだね」

愛海の口元は笑っているけれど、目の奥はまったく笑っていなくて焦ってしまう。

「あ、でも連絡はそんなに取ってなくて、飲み会のあとに会ったのも昨日がはじめてで」
もしかして、愛海はまだ涼真に気持ちがあったのだろうか。そうなると、愛海との関係も微妙になってしまう。

「ごめん、話すのが遅くなって……」

食事をする前に愛海にひと言知らせたほうがよかったかもしれない。様子をうかがうように上目で見ると、愛海の表情はさっきより柔らかくなっていてホッとした。

「謝ることじゃないでしょ。じゃあ、広瀬さんは飲み会のときからずっと百音のことを気にしてたんだ。ふーん……まぁ、百音は美人だし、そういうこともあるよね」

「び、美人って……愛海のほうがかわいくてモテるよ」

本当にそう思っている。私は飲み会のときに言われた通り、冷たいと見られることが多いので男ウケがいいのは断然に愛海のほうだ。というか、なんだろうこの褒め合いは。

着替える女性もいないので更衣室とは名ばかりの衝立だけで仕切られたロッカールームから出ると、掃除の準備をはじめる。