仕事はまだ忙しいものの、やっと目処が見えてきた五月。

陽射しに温かさを感じるようになり、緑が鮮やかで目にも心地いい。前のデートで“スポーツでもやる?”と誘ってくれた涼真だったけど、私が少し渋っているとサイクリングを提案してくれた。

「やってみると楽しいね」

自転車をレンタルして自然いっぱいの公園から出発すると、土手沿いを走った。横目で近くの川を眺めながら、ゆっくりと自分たちのペースでペダルをこぐ。涼真との会話も楽しめるし、肌に感じる風が気持ちよくて爽やかな気分になった。

「大人になると、学生気分に戻るのもアリだね。高校のときチャリ通で毎日こいで嫌になってるはずなのに、今日は楽しいもん。まー、俺がまだ子どもなだけなんだけど」

春風を全身で受け止めながら、楽しそうに笑う。その笑顔に胸がキュンと高鳴った。

自分のことを子どもだと言えるのは、ある意味大人だ。涼真の良さをまたひとつ見つけて嬉しくなる。

「修学旅行先も、また大人になって行くと違う発見があったりするもんね」

選ぶ余地がないのと、選んで決めた選択は違う。とはいえ、涼真ならなんでも楽しめてしまうのだろうけれど。

この人といると、どんなことも楽しめるし、ポジティブに捕らえることができる。それに、こんな風にヤンチャなことも飾らずにできるし、子どもっぽい自分でも構わないと思えて、気持ちが楽だった。

やっぱり、いい影響ばかりもらえているみたいだ。

「けど、ちょっと体力は……」

「学生のときのほうがあった? そろそろ休憩しよっか。あそこのカフェ、雰囲気良さそうじゃない?」

自転車のスピードがどんどんと遅くなってきた。それを見かねて、涼真が近くのカフェを指差してくれる。