淡い光
Ⅱ.繰り返し
目を覚ますと私は夜の屋上に居て、自殺しようとした事を思い出す。

あの心地の良い夢が私の脳内を占めているお陰か、自殺の事など微塵も頭に無かった。

この時の私はもう遅いと言う事もあって帰宅したが不思議な事にそれ以来、夜に寝る時あの夢を一日一回必ず見るようになる。

初めは夢の内容が全て同じだった。

しかし、夢を見始めてから数週間が経ったある日、夢の内容が少し変化したのだ。

場所も風景も男性の顔が見えないという所までは同じなのだが、トンネルの近くまで私自身が近付けるようになったのだ。

そしてその日を境に、その夢は徐々に物語が進んでいく。

少しだけトンネルの中まで入れたり、男性の顔が一瞬ちらりと見えたり、訴えかけられている言葉を少しだけ聞き取れたり。

私が聞けた言葉は「気を付けて」「ここに居るよ」の二言だけで、後は初めと同じで口が動いているだけで何も聞き取れない。
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