W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~

私だけの王子様

あれから、2か月が経った。

静香は今、引き継ぎの真っ最中。

あの後、梗月から告げられたのは、梗月の別会社への移動。
帰り際に父の春月に話をされたのはこのことだった。

・・・・

今度は九州にある、ある子会社に社長として就任する。
その話を聞いて折角想いが通じ合いこれからもずっと一緒だと思っていた静香は愕然とした。
そんな静香に梗月は笑いながら言った。

「静香、僕は君を離さないと言っただろ?父の要請に僕は条件を出した。」

「条件…?」

「そう。移動先には静香、君を秘書として連れて行く。もちろん父も了承してる。僕たちは約束通りこれからもずっと一緒だ」

「梗月さん!」

嬉しくて抱き着いた静香を梗月はしっかりと受け止め、抱きしめる腕に力を込めた。
顔を上げると目尻を下げた甘い梗月の微笑み。
お互いに目を伏せ近づく吐息……。


・・・・

むふふ・・・

思わず仕事の手を止め思い出し笑いをしているとゴホンと咳払いが聞こえる。
はっと我に返り横を見ると専務秘書の東山がじっと静香の顔を観察していた。

「あ、あの、東山さん?」

「新村さん、にやけ顔が気持ち悪いですよ。色ボケは家に帰ってからにしてください」

「す、すいません…」

しゅんとする静香に、東山はにやりと笑う。
梗月が転勤することになり、前澤副社長がこの会社の社長に就任することになった。
東山も前澤に付いて社長秘書となる。
今は東山に引継している最中だ。
静香に辛辣なことを言ってはいるがこれは誰に対しても一緒で、あの前澤副社長にも容赦なく意見を言う。
でも秘書としての仕事は完璧で静香にとって尊敬すべき先輩でもある。

あの後帰ってから前澤副社長には梗月が仕事に穴を空け迷惑をかけたことを謝り、そして背中を押し二人に協力してくれた事を感謝した。
東山もフォローしてくれ、梗月と静香のことが知れたが東山の態度は変わらず善き理解者となってくれた。

「全く、こちらの手間を増やすのは止めてください?」

東山らしく辛辣にお小言をもらったが今じゃ感謝してもしきれないくらい助けてもらってる。

ある程度の引き続きは終わっていて後一ヶ月後にはここを去ると思うと感慨もひとしおだった。

初めての就職、初めて秘書として上司に付き、初めて梗月のようなイケメンに出会い、初めて愛しくも苦しい恋をした。

「…さん、に、い、む、ら、さん!」

「は、はい!」

「ほら!今は引き続き!このまま終わらなかったら、社長と一緒に転勤なんてできませんよ!」

「は、はい~~っ」

また思い出に浸りすぎて東山に怒られ慌てる静香。
引き続きが終わらなくて梗月に置いてかれるのは嫌だ。
気を引き締めて続きに取りかかった。


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