──────

確か……この辺りにあったはずだ……。
あった、これだ。

偽物《イミテーション》だけど、パッと見わからないだろう。
つーか、分かるほど近づくなって話。

……やりたかった仕事。
ほぼ立ち上げのとこから携われるんだ。
こんな事で、駄目になってる場合じゃない。
出来ることなら、何でもする。
すでに、上層部には話をしている。
他部署にも、まわってるだろう。

大丈夫だ。

くすんで黒くなったシルバーを磨き上げ、左手の薬指にはめた。“女()け”
ちょっと緩いが、それっぽい。

……結城もいるし、大友もいる。
分散されるだろ。
あいつらがいれば……。

翌日の初出社に向け、入念に準備した。
女性を生理的に近づけなくなって、久しかった。
_____

……正直、自惚れていた。
今までの経験がそうさせた。

肩透かしもいいとこ。
それが、初日終わっての感想だった。

一方で、仕事は思っていた通り……こなすにはなかなかの量だが遣り甲斐も十分だ。


……転職して、良かった。
勝負は数日後からだった。
社内一通りの研修を終え
5階フロアに営業部が作られることになった。たった5名で形成さる。

広くは……ない部屋。
女性は二人。

大友や、結城が外出の時もあるわけで……
女子社員と二人。
そんな状況も多々、あり得る。

どう過ごすか……仕事に集中していても
反応する……。勝手に……。

──
席の配置は男女で向かい合わせ。パソコンで仕切られる。加えて、結城と大友で挟む形にしてもらった。

おそらく、事前に大友が話をしてくれているはずだ。

それなのに……。
近い。
なんだよ、この女。
近い。
にこにこと、人のパーソナルスペースに入ってくる。
この営業部で事務をしている彼女は……今後も一番接触しなければならない人だ。

近づかれる度に、ぞわり……。立つ鳥肌。
だが、業務の話が終わるとすぐに席に戻った。
……それは、用事があるたび、繰り返された。
逆に、用事がないと……近寄っては……来ないのか。
会社であれば、当然といえば当然なのだけれど。

大友の感じから、年下だろう。
妙に……仕事は出来るみたいだが。
下となると、新卒……?あ、短大出てたらもうちょい下もあるのか……
悪意はないみたいだ。

その……自惚れるような、ことも。

大友にも、結城にも、その距離感だ。
そして、いつも、ふわふわにこにこしてる。