あれほど、気の重かった営業職も

はや3年近く経っていた。

初めてといっても良いほど、人間関係が円滑だった。

仕事より、それが私にとっては嬉しかった。

とても良い、職場環境だった。

営業先でよく言われた。

『誰と恋人なんですか?』

それこそ、もっと下世話な表現でも言われた。

“誰と”というのは…うちの営業3人のうちのという事だ。

『そんな関係では、ありませんよ。』

何度言っても勘ぐられる。

『お似合いなのに。』

誰と?

『では、恋人が?』

誰に?

これくらいは、大人としては流せないといけないのだろうか。

それとも…この質問自体、挨拶みたいな物なのだろうか。

…相変わらず、恋人はいなかった。

あの部で、ハッキリと恋人がいると、分かっているのは佳子ちゃんだけ。

あと…吉良君は…結婚してる。

恐らく、随分早く結婚したのだろう。男性にしては。

それについて話をしたことはなかったし、誰かに聞いた事もなかった。

プライベートな話はしたことがなかった。

佳子ちゃんと、るなちゃん以外は。

取引先を出て、時計を確認した。

…直帰しよう。

そうして、会社へその旨伝える連絡を入れた。

「中条さん。」

呼び止められて、振り返る。

…見覚えはなかった。

「すいません、突然…。あの…今度食事でも…。」

幾度となく聞いた、その言葉…。

「…わかりました。」

今から空いてますけど、行きます?

そこの居酒屋でも。

そう言えたら良かったのに…

空いてる。いつでも。

もっと、気軽に誘ってくれればいいのに。

連絡先を交換し、週末に持ち越された。

そう、いつも相手は構える。

きっと、予約してくる“いいお店”を。

そんなのは、いらない。

ただ、普通に接してくれたらいいのに。

思っているほどの、女じゃないのに。

それは、1度会えば分かるのだろうけど。

そして、2度目はないのだろう。また、今回も。

次から次へと

同じ事が繰り返される。

変わらなきゃ。

私が…。

そのまま…

一歩踏み出した。

一度やってみたかった。

bar【contrast】

ドアをそっと開けた。

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