行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?

足りないもの

「さくら、溜め息が多すぎ」

隣の席の望月桃子、26歳が、チラッと目線を寄越す。

ため息の主は、西園寺さくら、26歳。

"triple birth union"

の専務取締役だ。

専務とはいえ、実質的な経営者なので、社長といっても過言ではないのだが、一応、社長の肩書きは他者に譲っている。

本来、さくらは、西園寺コーポレーションのお嬢様にして唯一の跡継ぎとしての立場を優先させねばならないのだ。

西園寺コーポレーションは、明治時代から続く、総合商社で手広く事業を展開している。

さくらは物心ついた頃から

"あなたはお祖父様とお父様の会社を継いで、あなたの夫と共に会社を盛り上げていくのよ"

と言われて育ってきた。

祖父にも父にも兄弟はおらず、次の世代に生まれてきたさくらも何故か一人っ子のままだ。

当然、母が身籠ったとき、さくらが男児であることを期待されていた。

しかし、生まれてきた子供は女児だった。

西園寺家は、何故か一人しか子宝に恵まれない宿命。

お気楽な性格なのか、

祖父も父も早々にその事実を受け入れ、さくらに期待をかけることにした。

繰り返される英才教育・・・

いい加減、うんざりしたが、

祖父母、親の期待を裏切らず、さくらは何でも器用にこなした。

「つまんないなー」

器用な上に飽きっぽいさくらを宥めるため、祖父と父はさくらに5年間の猶予を与えた。

与えられた5年間で、さくらはやりたいことをやればいいと・・・。

気を良くしたさくらは、大学を卒業後、

小学校からの友人である、望月桃子、新山拓海と共に立ち上げたゲームやアプリ開発、コスプレイベントを企画する会社"triple birth union"を立ち上げた。

"triple birth union"は

今や業界で3本の指に入ると言われている程に成長。

経営者のさくらが抜けても、問題はない程に機能している。

< 1 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop