果報者
「......なぁ、志乃さん。」


「........ん?」


「聞きたいことあんねん。」





娘を膝に乗せ
そう呟いた彼の瞳が揺らいでいたこと


私の目は一切見ないこと



ふと見えた携帯の待ち受けが
2年前と変わらず
あの日の夕空のままであること



全てを悟った。



彼は気付いてる。



ううん。
気付いちゃったんだって。






「まこは病院にいるんやな。」





そして彼はそう言った。


彼の言葉を待たずに
私の目からは涙がこぼれた。




紺ちゃんごめんねの涙。


嘘ついてごめんねの涙。


こんなにも彼女を
想い続けてくれた嬉しさの涙。



泣かないって
必死に涙を拭う彼の代わりに流した涙。





まこ?


あなたはこんなにも愛されてる。



あの日



まこがクラスペディアを選んだ理由。


託した思い



全部彼は気付いてるよ。
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