現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
突然の提案
「経験値ねぇ……」

手を顎にやり、うーんと考え込んでいたヴェネディクトがはっと顔を上げて、グレースを見た。

「それってさ、どこかの図書室でもいいんだよね?司書って仕事を経験してさえいれば」

「え?ええ、そうだと思うわ。図書館は王立図書館と神殿の図書館しかないもの」

ちなみに神殿の図書館で勤められるのは神職の男性限定なので最初からグレースは諦めている。

「じゃあさ、図書室で司書の経験積めばいいよ!」

綺麗な顔がにっこり笑顔で言うと妙な説得力があるのはなぜだろう?今も納得しないまま頷きそうになったグレースは、すんでのところで思いとどまった。

「積めばいいよって、それが出来ないから困ってるんじゃない!」

「そう?出来ないかなぁ?」

「出来ないわよ。時間だって足りないし、何より当てがないもの!」

ついつい口調がキツくなり、声が大きくなる。レディ失格だと思いながら、グレースは止められなかった。

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