現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
貴公子の計略
「そんな事、許される訳がありませんよ!」

神経質な硬い声が一切の希望を断絶するが如く部屋に響いた。

「そんな!お義母様、もう少し話を聞いてください!」

「そんな話、これ以上聞いても無駄ですよ。大体、れっきとした伯爵令嬢が働くなどと、そんな恥知らずな事を許せる訳がないでしょう!しかも縁もゆかりもない他家に迷惑をかけなければつけない仕事など。ご自分でも甘え過ぎだとは思いませんの?」

「それは……」

シーモア伯夫人コーデリアの言葉がグレースの心をぐりぐりとえぐっていく。それは予想以上のダメージで、グレースの頭には「すみませんでした」と退室する自身の姿が何度も過ぎった。

「しかも、どこの家にお世話になるのかも分からないなんて、お話にならないわ」

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