愛は貫くためにある
麗蘭は、目を覚ました。

(そういえば…昨日、わたし助けてもらって、あの夫婦の家に…)

目を擦りながら窓を見ると、外はカラッと晴れていて気分がよかった。
喫茶店を経営している夫婦が優しかったから良かったものの、これから先わたしはどうしたらいいんだろう。麗蘭は途方に暮れていた。

「入るわよー?」
桃がドアをノックして入ってきた。
「あっ、起きてたのね。おはよう」
「お、おはようございます…」
「よく眠れた?」
「少しは…」
「そっか…」
桃は眉を下げて言った。
「あの…わたし、どうしたらいいでしょうか?」
「どうしたらって?」
「その、ご迷惑をかけてしまうことになってしまうかもしれないし」
「そんなこと気にしなくていいわよ。特に行く宛がないのなら、いつでもいていいんだから」
「でも…」
「安心して。いつでもいていいの。ゆっくりしててちょうだい」
桃の笑顔に、麗蘭は救われた。
「よろしく、お願い、します…」
「はい、よろしくね」
「桃!麗蘭ちゃん!ご飯できたぞ」
春彦が入ってきた。
「わかった!麗蘭ちゃん、行きましょ、こっちよ!」
桃は笑顔で麗蘭の手を引っ張り、麗蘭の部屋をあとにして階段を降りた。

1階の真四角の長方形をしたテーブルに、桃と春彦と麗蘭が座った。
「麗蘭ちゃん」
「…っ、は、はい…」
麗蘭は驚いてびくっと肩を揺らした。
「ああ、ごめん。驚かせちゃって」
春彦が、顔の前で両手を合わせている。
「もう!だめじゃない、春彦!」
「ごめんって。ごめんね?麗蘭ちゃん」
「いいえ、大丈夫です」
「それならよかった。はい、これは麗蘭ちゃんの分」
お礼を言って春彦から受け取ったのは、皿に置かれたサンドイッチ。ハムサンドとタマゴサンドだ。
「美味しそう…」
麗蘭が思わず零した言葉に、桃と春彦は笑みを零した。
麗蘭が美味しそうにサンドイッチを頬張る。とても幸せそうな顔をする麗蘭を、桃と春彦は目を細めて見ていた。
「美味しい?」
「はい、おいひいですう、うぐっ、」
「あ、あらあら!大丈夫?」
桃が急に話しかけたことに驚いた麗蘭は、口に入れていたサンドイッチを喉につまらせそうになった。
桃は、麗蘭の隣で背中を擦っていた。
「はあ…」
麗蘭が溜息をついた。
「ごめんね?驚かせちゃって…」
麗蘭が桃を見ると、とても申し訳なさそうな顔をしていた。
「ごめんなさい、わたし驚いてばかりで…」
「いいんだよ。なにせ、知らない人とこうやって食事をしてるんだ。知り合いならまだしも、他人とこうやって食事するだなんて、怖くて仕方ないよな。ごめんな」
春彦が謝った。

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