愛は貫くためにある

手の届かない人

麗蘭は、胸を踊らせながら佐久間を待っていた。佐久間と話をするようになってからというもの、麗蘭はとても楽しそうにしている。それが、桃と春彦にはとても喜ばしいことだった。
毎日は会えないが、たまに会えるだけでも麗蘭は嬉しそうだ。

(佐久間さん、まだかな)

麗蘭はカウンター席に座り、頬杖をついた。
「ふふ、待ち遠しいわねえ」
「はい。待ち遠しいです」
麗蘭はふふっと笑って桃を見た。
「お?否定しないのか?」
春彦が驚いたように言った。
麗蘭は照れながら頷いた。
「佐久間さんの絵を見るのが、好きなんです」
「とか言っちゃって。本当は、佐久間さんに会いたいんでしょー?」
「そ、それは…」
もじもじとする麗蘭を見て、春彦は笑った。

カランコロンと音を立てて、ドアが開いた。佐久間だった。

「あっ!佐久間さん!」
麗蘭は小走りで佐久間の元へ駆け寄った。
「麗蘭ちゃん、来たよ」
「ふふ、嬉しいです。こっちです」
麗蘭は佐久間の手を引っ張り歩いたが、麗蘭の細い腕に鋭い痛みが走った。

「いた…」

麗蘭が自分の腕を見ると、誰かに掴まれている。

「おい、やめろよ莉子」
「だって、この娘、勝手に手を握るんだもん」
許せないし、と赤い髪を高めのツインテールにした女の子が麗蘭を睨んだ。
「離しなさいよ!いつまで握ってんのよ!」
その少女は、麗蘭の手を佐久間の手から引き離そうと強い力で麗蘭の手を引っ張った。

(いたい…いたいよ…それに怖い…)

麗蘭は佐久間から直ぐに手を離した。
佐久間は、麗蘭に手を離されたことに寂しさを感じていたのを、佐久間の後ろにいる赤い髪の背の高い女性は見逃さなかった。

(…っ、いたい…!)

麗蘭の手は、ツインテールの女性に捻られて痛みを増した。

(どうしてこんなこと、されなきゃいけないの…?わたし、なにもしてないのに…それに、どうして佐久間さんはわたしを助けてくれないの…?)

麗蘭は悲しくなった。それにしても、佐久間と入ってきた赤い髪の二人は誰なんだろうかと麗蘭は思った。

「莉子、やめろ」
「わかったよ」
ぷい、と莉子は麗蘭から手を離した。
「なるほどね。和哉がここに入り浸る理由がわかった」
佐久間は、カウンター席に座った。佐久間の左隣にはツインテールの女性、右隣には真っ直ぐなロングヘアの背の高い女性が座った。


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