旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。

私がしたいのは子作りではなく……

五月の連休中に私達は挙式した。
場所は会社がいつも管理を任されている公園の中庭で、特別に許可を貰い、ガーデンウェディングを開いたんだ。


そこで私達は人前で婚姻届にサインをして夫婦になった。

緊張しながら書面に名前を綴る和装姿の私を見つめながら、祖母は涙で目を潤ませ、皆藤さんに何度も、「未彩をお願いします」と言って頭を下げていた＿＿。




「はぁー……」


全てが終わり大きな溜息を吐き出すと、タクシー内で隣に座る彼が振り返り、「どうした？」と窺い見ながら訊いてくる。

その声に目線を向けると、皆藤さんはいつも垂らしている前髪をバッグに流し、聡明そうな額を露わにして微笑んでいた。


「ちょっと気が抜けたと言うか、この二ヶ月間ずっとバタバタし通しで忙しかったので」


あの出会いの夜から本当にバタバタと慌ただしく準備をした。

先ずはお互いの両親に会って許しを貰い、式場を決めて、招待状も慌てて作って親族に送った＿＿。



「本当だね。特に未彩さんは殆どの準備を一人でしてくれたし」