旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
思いも寄らない感情に戸惑って
旦那様が折角早く帰ってきたというのに、気持ちも漫ろ(そぞろ)な私は、ぼうっとしたまま食事をして、味を殆ど感じずに終わらせることになった。


食後もカチャカチャ…と食器を洗いながら、改めて自分が打算で結婚したんだと痛感し、これじゃ社長の言うように、庭が作れると思ったから結婚を決めたと言われても無理ないと感じて、実際にもう庭のリフォームも始めちゃってるから否定のしようもないな…と溜息を吐きながら皿を伏せる。


それを違うとは決して言えない。
確かに私は庭作りをしたかったし、此処でそれが叶えられるなら、十分過ぎると考えていた。


(でも……)


それでもやっぱり打算で結婚したのはマズかった。

彼のことが好きかどうかも分からないのに一緒にこの家に住み、彼の祖父母が大事にしていた庭を、勝手に黙って作り変えようとして__。



(どうする?今更だけど皆藤さんに話す?)


月詠みの庭を作り変えるつもりで、既に紅葉の樹を一本移植しましたって。

ついでに他の樹の枝を間引いて、貴方のカードを使い、庭に敷く玉砂利も購入してますって……。


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