次期院長の強引なとろ甘求婚


「あっ、こんばん、は……」


 今日はこの間の病院で見た時とは違って、いつもお店に来る時と同じスーツの姿の三角先生。

 記憶だと、普段はネイビーやグレーなど明るめなものをよく着ている。

 だけど今日はブラックのスーツで、そのせいかいつもと雰囲気が違って目に映った。

 私の顔を見るなり、三角先生はにこりと爽やかな笑顔で会釈をする。

 そして「こんばんは」と言った。


「どうですか、体調の方は」

「あ……はい、おかげさまで耳の聞こえはすっかり良くなりました」

「それは良かった」


 三角先生と私の会話を聞いた父親が横から口を挟む。


「三角さん、お前のかかった病院の先生らしいな! 名前を聞いたら、そこの三角病院の三角さんって驚いたよ、なぁ、母さん」


 父親も三角先生の突然の来訪に相当動揺しているらしく、何を言っているのかもはやよくわからない。


「夜分に突然失礼します。今日はご提案がありまして、個人的にうかがわせていただきました」


 落ち着きのない我が家を前にしても、三角先生はいつもと変わらず落ち着いた調子で話を切り出した。

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