次期院長の強引なとろ甘求婚


「予定が合いそうなら、気晴らしに出かけたいと思ったんだけど、どうかな?」

「え……気晴らしに……? どちらにですか?」

「八ヶ岳なんだけど、バラ園を所有しててさ、ちょうど今、見頃なんだよね」

「バラ園を? え、すごい……」


 あ……可愛い顔。

 花の話をした途端、未久さんの表情がパッと華やぐ。

 今日は終始緊張したような表情だったから、やっといつもの未久さんに出会えたような気分だった。

 連れていくことが叶うなら、きっと喜んでもらえるはずだと確信し、「どうかな?」と後押しする。


「きっと、好きだと思うんだ。だから、ぜひ連れて行きたい」


 ちょうど車へと到着し、そっと彼女の顔を覗き込んで返答を待つ。

 目を合わせた未久さんは頷いて、「はい、行ってみたいです」と答えてくれた。

 約束を取り付けることができたことと、目の前ではにかんだ彼女が可愛すぎて気分が高揚する。

 思わず背に添えていた手で彼女を引き寄せ、腕の中に閉じ込めてしまった。


「じゃあ、決まり。楽しみにしてる」


 髪のかかる耳元にそう囁いて、すぐに抱き寄せた両手から解放する。

 本当はもっと彼女に触れていたいと、雄の願望が騒ぎ立てる。もっとそばで彼女を感じたい、と……。

 でも、大事にしていきたいと思う気持ちが何より強い。

 未久さんから発される緊張感は、今日一番を記録更新していた。

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