異世界から来た愛しい騎士様へ
第3話「専属護衛」
第3話「専属護衛」
エルハムは夢を見ていた。
懐かしい王女である、大好きな母の夢を。
踊り子だった母は、躍りや歌が大好きな人だった。王女になってもそれは変わらず、人々に躍りや歌を披露しては、国の民を喜ばせ笑顔にさせていた。美しく、聡明で、気さくな母は、エルハムの自慢であり誇りだった。
そんな母がエルハムにいつも言っていた事があった。
それは、「国の人々を大切にしなさい。そして、あなたに合った方法で笑顔にしてあげて。」
その言葉は母が亡くなった後も、エルハムの心にしっかりとあった。
けれど、母のように人々を笑顔に出来る方法とは何か。
それを考えても、エルハムにはわからなかったのだ。
目の前の母に、エルハムは「私には何が出来るの?お母様……。」と、問いかける。
すると、母親はいつもの優しい笑顔でエルハムに微笑みかけるのだった。
「エルハム。あなたには、あなたの素晴らしさがあるわ。それを自分で見つけるのよ。」
夢の中ではいつも同じだった。
そんな事を言われても、わからないよ。エルハムはそう思って泣いてしまう。
そこでいつも夢は終わる。束の間の母に会える時間。いつもあっという間だ。
そして、目を開けると現実でも涙を溢しているのだ。