異世界から来た愛しい騎士様へ
第4話「望むもの」
第4話「望むもの」
エルハムは、少年に会った時からその鋭い目線と繊細で綺麗な動きをする剣術に魅了されていたのかもしれない。
スッと伸びた背筋、腕や足。そこから一瞬で技をくり出す動きはとてもしなやかだった。
騎士団の稽古や剣術大会などで、いろいろな人たちを見てきたけれど、シトロンの騎士団の中で彼に敵うのはセリムぐらいだとエルハムは思った。もしかすると、セリムでも彼を倒せないかもしれない。
そんな彼がこの国に来てくれたら、きっとみんなが彼の剣術を知りたいと思うだろう。少年を必要としてくれる人は多いはずだと思った。
この国を知らないのならば、自分が教えていけばいい。エルハムは、自分の考えで助けた少年なのだから、その役目も自分自身でやろうと思っていた。
そのためには、彼を自分の元へ置くのが一番の良い方法だと思ったのだ。
エルハムの専属護衛はいなかった。
出掛ける時は、騎士団長のセリムが面倒を見てくれたけれど、本来ならばセリムの仕事ではなかった。彼が「心配なので。」と着いてきてくれるのにエルハムが甘えていただけだった。
セリムは団長として忙しい人だ。
それならば、セリムと同じぐらい強い少年が傍にいてくれるのであれば、セリムの負担も減るのではないかとエルハムは思った。
けれど、エルハムの言葉に真っ先に反対したのは、セリムだった。
「姫様。私は反対です。」
「セリム………。」
「あの男は、どんな男かわかりません。それにあの強い男がこの城で悪事を働いても、止められる人がいないのですよ。」
「でも、味方になったら心強いでしょ?」
「ですが………。」