とにかく平静を装ってはいたが、その日はよく眠れなかった。

隣の布団で熟睡し、気持ちよさそうに手足を伸ばす大地を、悠莉は恨みがましく睨んだ。

自分だけが意識していると思うと、無性に腹が立つ。

熟睡出来ないまま朝を迎え、洗面所で顔を洗っている時にはうすいくまを発見した。

普段はまったく使わないコンシーラーをなじませ、心の中で大地に悪態をつく。

アラームを7時30分にセットしていたが、チェストの上の時計を見れば7時18分だった。

目覚ましが鳴るより先に起きてしまった日は、なんだか損をした気分になる。

そんな時はいつも睡眠を優先しておざなりになっている朝食を作り、胃袋を満たして自分のご機嫌を取るのだ。

賞味期限が昨日だったフランスパンを厚めにスライスし、牛乳とバニラエッセンスが入った卵液に漬け込んでいる間に、悠莉はフライパンを火にかけた。

手早くソーセージとアスパラを炒める。

味付けは塩を少しと、胡椒は気持ち多めに。

大地は朝食は食べるがあまり量はいらない。

社員旅行で温泉などのバイキングに行くと、だいたい朝は卵焼きを一切れか二切れ、漬物を少し、それにお茶漬けかご飯を一杯程度で満足していた。

バターを落としてフレンチトーストを焼いている間に、悠莉はカーテンを開けに部屋に戻った。

今しがた起きたばかりなのか、体は起こしているものの半目で口が緩くあいている大地が、あくびをしながら伸びをしていた。

「おはよう。なんかうまそうな匂いがする」

「おはよ。今日の朝飯はフレンチトーストとソーセージとアスパラ。もう出来るからさっさと顔洗え」

カーテンを開けて日光を部屋に入れれば、それだけでなんだか気分がシャキッとする。

眠そうな足取りで大地がトイレに行ったあと、悠莉は布団を片付けて、ローテーブルを元の場所に戻した。

ワンプレートに盛り付けた朝食と麦茶の入ったグラスを二つ運び、テレビをつけてニュースを見ながらフレンチトーストを頬張る。

これで大地がいなければゆっくり部屋の掃除でもするのだが。

「おお、すげえ。ちゃんとした朝飯とか久しぶり」

トイレから戻ってきた大地は、目を輝かせていた。

「いただきます。意外と料理出来るんだな」