エレベーターが一階に到着し、悠莉が正面玄関前に着いたのは19時ぴったりであった。

ロビーのソファーに浅く腰掛け、大地は何やら真剣にスマホの画面をスクロールしていた。

ただそれだけの姿でもじゅうぶん絵になるのか、彼をチラチラと見る女性は多かった。


「お待たせ。今日はどこで呑むの?」


少し遠くから悠莉が声をかければ、大地はスマホをスーツのポケットにしまった。


「甲州屋にしよう」

「ワインの気分か。わかった」


会社から二駅離れた閑静な住宅街にある甲州屋は、山梨のワインとそれに合う料理を出す居酒屋である。


「にしても小野寺、甲州屋好きだな」

「うん好き。でもデートには向かない店だから、お前か男友達とじゃないと行けない」

「あそこボロボロだし、雰囲気はあれだもんな……酒と飯は旨いけど。ところで今デートって言ったけど、彼女そういうの気にすんの?」


隣を歩いていた大地の足が、不自然に止まった。

何か地雷を踏んだのかと身構えた悠莉だが、大地は神妙な顔つきで「それについてはまた後ほど」と言ってきた。

どうやら、今日の呑みの目的はその話しらしい。

大地が悠莉を誘うときは、だいたい恋愛相談か人生相談、もしくは単純に酒を浴びるように飲みたい時である。