女王陛下のお婿さま
03*朝焼けの約束

 真っ暗だった空が山の向こうから、だんだんと白み始める。星明かりは登ってくる太陽の光で弱まり、代わりに雲が赤く輝き。森のヒバリたちがその明るさで目覚め囀ずり、朝を告げる。

 太陽が山の上にすっかり登ってしまうまで、アルベルティーナはそんな朝焼けを自室の窓からずっと眺めていた。

 今朝はいやに早く目が覚めてしまった。

 その原因は、子供の頃の夢を見たから。

 あれは……まだアルベルティーナが十歳の頃だった。この部屋で今のように、クラウスと二人で朝焼けを見た事があったのだ。その時の夢だった……

 そんな夢を思い出して懐かしさを感じていると、ドアが叩かれた。


「――――アルベルティーナ様、おはようございます、マイラです。起きていらっしゃいますか?」

「おはよう、マイラ。起きてるわ」


 返事をすると、ドアをそっと開きマイラが入って来た。


「珍しいですね、アルベルティーナ様が私が起こす前に起きているなんて」

「あら、私だってたまには早く起きるわ」


 そんな軽口を叩きながら、マイラは隣の衣裳部屋へ入っていった。そしてすぐに一着のドレスを選んで戻って来る。


「今日はファビオ王子と外出ですから、動きやすいものにしました」


 そう言って、水色のシンプルなドレスをアルベルティーナに渡した。
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