コール・ミー!!!
いつの間にか瑠衣はドアを背に、
彼の止まらないキスを、受け止め続けていた。


















ちょっとした彼の吐息や、






















潤んだ熱い視線や、




















重なる肌の感触を、


















彼の、愛しさから溢れる衝動を、





















自分の全てで、受け止めていた。























触れられた部分の敏感さに、
思わず自分で、驚いてしまう。


























よくわからないが、涙が零れてしまった。





















彼は、瑠衣の首筋に指を這わせた。












「…!くすぐったい…」













彼は名残惜しそうに、瑠衣にもう一度長いキスをすると、















「ここだけ、寂しいから」









と言って、
ドアの横に置いてあった鞄の中から、緑色の長方形の箱を取り出した。









箱を開けると、そこには親指くらいの大きさの、白猫の形のビジューが連なった、美しいネックレスが入っていた。













「つけてあげる」


















彼は後ろに回らず正面から、頬に唇が触れてしまいそうな距離で、瑠衣のデコルテ調に開いた首元に、ゆっくりと白猫ネックレスをつけてくれた。

















瑠衣の花嫁衣装は、これで完璧になった。





















「やっぱり、似合う」



















彼はまた、瑠衣をぎゅっと愛おしそうに抱き締めると、

















「誰にも見せたくない」























と言い、頬に軽くキスを落とした。

































自宅へ帰り、夏休みも残りあと1週間。
文化祭の準備が大詰めを迎え、クラス展示の準備のため登校することになった。



午後からの登校だったため、早めに駅前のパンケーキ屋にてランチをすることになり、瑠衣、泉美、雅の3人だけで会う事が出来た。

店に入る前、待ち合わせ場所で久しぶりに会った2人は、記憶が戻ってからはじめて会う瑠衣を、嬉しそうに抱きしめてくれた。


「泉美、雅、ただいま!!」


「おかえり~~瑠衣!」


「瑠衣さん、おかえりなさい!」






幸せで、胸がいっぱいになってしまう。







店内に案内され、カラフルなフルーツがたっぷりと乗ったパンケーキも大体胃袋に収まり、お互いの近況報告が一段落すると、瑠衣は二人にトオヤとの事を打ち明けた。



「おめでとう、瑠衣!付き合うことになったのね、久世君と」




「良かったですね!瑠衣さん」





二人は、明るい笑顔で祝福してくれた。



「ありがとう」



泉美はちょっと躊躇いながら、



「滝君には、言ったの?」



と聞いてきた。


瑠衣は、首を横に振った。



「ううん、まだ。これからクラスで会えると思うから、その時に話そうと思ってる」


泉美は頷いた。


「クラス展示の準備、滝君が陣頭切ってるらしいから忙しそうだけど、多分間違いなく会えると思うわよ」














学校に到着すると、トオヤは既に教室に入っていた。


「おはよう。合宿では、…ありがとう、トオヤ」


瑠衣は妙に緊張してしまい、付き合ってから初めて学校で会う彼氏に、ぎこちなく声をかけた。


「うん。おはよう、瑠衣」


トオヤは自然な笑顔で、瑠衣に優しく笑いかけた。


「トオヤ、あのね、私…滝君と今日、ちゃんと話したい」


トオヤは頷いた。



「うん、俺も滝と話したい」



すると。
いきなり、後ろから肩を叩かれた。


「…2人揃って、俺に何の話?」


滝君が、声をかけてくれた。


「すぐ済むなら、作業始まる前の今だったら時間取れるけど」



彼はいつも、神出鬼没である。












3人で誰もいない校舎裏へと移動し、瑠衣から滝君に報告した。


「滝君。私、トオヤと付き合う事になったの」



滝君は少し間を置いてから静かにため息をつき、想像していた通りだといった表情で、返事をした。




「…そっか」




瑠衣は、滝君に頭を下げた。





「…色々振り回して、本当にごめんなさい」





思わせぶりな態度を取って誤解を与えてしまった事を、今でも恥ずかしく思い返してしまう。


滝君は、頭をあげろと身振りで示した。


「おめでと。…残念だけど、それなら俺は諦めるよ」


彼の表情はどんどん陰りながらも、最後に笑顔を見せてくれた。



「幸せになって。二人で」




トオヤは、滝君に話しかけた。



「滝、今も瑠衣が好き?」



滝君は少し驚いて頷き、鋭い視線をこちらに向け、



「今日まで諦めてなかったからな。…何だか急に、ムカついてきた」



瑠衣にしか見せたことの無い、彼特有の意地悪な笑みを見せた。



「佐伯!!」


「はい!!」



瑠衣はいきなり呼ばれて、びっくりした。




「…もう、俺の夢は見るなよ」





…………!!!!!





「…はい…」





滝君は、「じゃ!」と言って、教室に戻って行ってしまった。



















「…瑠衣」




トオヤが瑠衣に、声をかけた。








「…はい」












「今の、どういう事?」
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