甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
4.まさかの展開
4.まさかの展開


どうしよう。
明日の朝一番に届けなければならないのに。

しかも、あの封筒の中身はまだ発売前の大事なパッケージデザイン。

もし紛失したなんてことになったら始末書ものどころの騒ぎではない。

途方に暮れるというのはこういうことを言うのだろうか。
気が焦れば焦るほど、思考回路は停止し身動き一つ取れないでいた。

明日の予定をもう一度確認すべく手帳を広げる。

手帳の片隅に、さっき弥生から聞いて書き留めた『パーソナル・サポート・エブリシング・M』の文字がスポットライトを浴びたかのように明るく私の目に飛び込んできた。

一人で困った時に何でも助けてくれる親切な代行業者。一か八か連絡を取ってもいいかもしれない。

まさか、こんなにも早くその会社に連絡を入れる状況になるなんて。

でも今となってはそういう会社を教えてくれた弥生には感謝しかない。

夜中でも受け付けてくれるだろうか?こんな無茶な依頼。

半ばあきらめながらも電話をかけてみる。

どうか、社長がまだいてくれますように。

呼び出し音がしばらく鳴るも、誰も出る気配がなく切ろうとしたその時、男性の声が耳元に響いた。

『はい、パーソナル・サポート・エブリシング・Mです』

一気に項垂れた体勢を立て直す。

「こんな夜遅くにすみません!すごく今困っていて、誰に相談すればいいかわからなくて......」

『はい、大丈夫ですよ。まずは落ち着いてゆっくり深呼吸でもしましょうか』

私の動揺を和らげようと電話の向こうの彼の声が優しく言った。

「はい、すみません!」

私は言われるがまま、大きく深呼吸をした。

彼がクスッと笑っているのを感じる。素直すぎたのかしら。変な人だと思われたかもしれない。

だけど、例えそう思われたとしても、今はそんなことはどうでもいい。大事なことは封筒を見つけることだ。

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