甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
7.変わりたい
7.変わりたい


間宮さんの家でのぷーすけとの生活も気が付けば最終日を迎えた。

今日の夕方着の便で間宮さんが帰国する予定。
昨晩、18時頃家に帰るとメールで連絡があった。

ぷーすけはそんなことを知ってか知らずか、朝からずっと鼻を切なく鳴らしている。

「そんな寂しい顔しないで」

昼ごはんのラーメンをすすりながら、顔を近づけてくるぷーすけの頭を撫でた。

ぷーすけとの生活が終わってしまうのはとても寂しいけれど、また間宮さんがここに戻ってくることは私の心を一気に明るく照らす。

朝からずっとそわそわして落ち着かない。

こんなにも時間の経つのが遅く感じるなんて。

何度時計を見ても、一向に長針は進んでくれなかった。

間宮さんには帰るまで家で待っているように言われている。

18時までにはまだ時間があるというのに、全然落ち着かなくてずっとリビングに引きこもっていた。

最近、読書もしていないことに気づき、二週間前に読みかけたまま置いてあった単行本をバッグから取り出す。

挟んだ栞のページを開くと、最初に飛び込んできた文字に一気に顔が熱くなり思わず本を閉じた。

それは新しい章のタイトルだったんだけど……。

『あなたとキスしたい』

その文字が飛び込んできた瞬間、浮かんだのは間宮さんの甘い笑顔。

少し薄くて品のいい口元が勝手に私の頭の中でクローズアップされる。

私、なんてこと考えてるの?

そんな自分が嫌になる。

だけど、もし、間宮さんがキスしてきたら私は今までのように拒めるだろうか。

初めてキスするなら、間宮さんがいいかもしれない……。

だめだめ!何言ってるの!
そんなこと、あり得ないのに勝手な妄想しすぎだ。

こんな不謹慎な妄想、間宮さんに失礼だわ。

あんな素敵な男性、私みたいな女性にキスしたいだなんて思うわけないもの。
きっともっときれいで洗練されて性格もよくてユーモアのセンスもあるような女性が好きなはず。

大きく息を吐き、気を取り直して再び本を開いた。




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