桜の木に寄り添う

あの人

あの袋……やっぱり……そうだよね?

 家に帰ってからも、ずーっと考えていた。



 あの袋を取りに来たってことは!!


 私は急いで車いすを進めて、桜の木に向かった。

 そこに置いたはずの袋がなくなっていた。

 やっぱりあの人だったんだ!

 メモも添えられている。

『 ありがとう 』

 それだけが書いてあった。
 
 なんだか少しだけ気が抜けてしまって、がっかりした気持ちになってしまった。
 なぜなら、もう手紙のやりとりがなくなってしまうと思ったから。
 寂しかったのだ。
 いつもと違う日常を歩み始めていたから。

 でもあの人……。

 それはそれで仕方のない事なのかもしれないと、自分に言い聞かせた。
 
 ……

 次の日。

「おーい!なつ、聞いてる?」

「あ、なに?」

「さっきから話しかけてましたけど?」

 全然気づかなかった。

 私は、気が抜けたように、頭の中がぼーっとしてしまっていた。

「なつ、具合わるいんじゃない?帰りな!」

 具合悪いわけではなかったけど、その言葉につい甘えてしまう。

 店長はいつだって優しい。

 それに、いつも気にかけてくれている。

 実はあの事故の第一発見者でもある。
 店長が発見してくれなかったらと思うと怖い。
 倒れていた私を発見してくれて感謝しかない。

 精神的にもおかしくなりだった私を見守り続けてくれている。
 仕事だって、与えてくれた。


「すみません、今日は帰ります。」

 こんな状態でいても迷惑だと思う。



 私……どうしちゃったんだろう。

 今日は、そんな私の心とは真逆で、雲ひとつない空だった。

 空ってこんなに広かったっけ。
 空を見上げて立ち止まる。



 そんな時だった。
 突然、メールが届いたのであった。
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